老人ホームでの死は許されないのか

19日付けの新聞に特別養護老人ホームでインフルエンザにて7人が死亡、そのうち90歳台が4人であったとの記事が出ていた.この新聞を読むと、一般大衆はそこで適切な治療がなされていなかった様な印象を持つと思う.家庭内で誰かがインフルエンザになれば、同居する90歳台の人が接触感染し死亡することもありえる.もちろん同一施設、同一時期に7人が死亡するのは問題かもしれない.しかし、90歳台の人を病院へ転送し、病院で死亡すれば、この特別養護老人ホームは責任回避となったのであろうか.

家族のひとりが寝たきりになると、家庭でケアーするのは現在の核家族では極めて困難である.どのような人が特別養護老人ホームに入所でき、入所可能な人も、現実には1-2年の入所待ち状態であること、家で介護できず老人病院へ入院すると、最低でも1ヶ月15万円、5年間寝たきりだと900万円を要することを多くの一般大衆は知らない.

ペンは力である.それゆえ、ものごとの一方のみを報道すれば、一般大衆の多くは記事の全てが正しいとの錯覚をもつ.記事としてある問題を大きく取り上げるのはよいが、記者はその背景の問題点もきちんと認識した上で書いてほしいと思う. 

96年朝日新聞投稿 不採用